「上座部仏教」は「大乗仏教」の対として相応しいか?
「スマナサーラ長老が上座部仏教という呼び名は差別的、と言っていた」云々として、自分教学をゆんゆん展開し始めた人に制御棒注入(日本テーラワーダ仏教協会HP掲示板にて)。
テーラ(上座,長老)ワーダ(部,教え,スクール)なので、上座部は訳語としては必ずしも間違っていません。
上座部仏教という言い方に問題があるのは、大乗仏教という用語とのバランスからです。上座部と対応する大乗の呼び名は「方広部」ですし、大乗仏教と対応す るのは「小乗仏教」です。「方広部」なんて誰も知りませんし、「小乗仏教」は蔑称ですので、使うべきではありません。
では上座部はどうかというのは、北伝部派仏教にもあった部派名ですので、それと無関係の現存のテーラワーダ仏教と紛らわしい。現存のテーラワーダは厳密には「(上座部の流れを汲む)分別説部」と名乗っていました。
他の部派が滅びた現在、そのような細かい分類にこだわる必要もないし、現在のテーラワーダ仏教は少なくとも主観的には釈尊直流の「上座」の教えに由来する のですから、同じく主観的な自称である大乗仏教と対照するならば、「上座仏教」がふさわしいと、前田恵学先生を中心に提唱されています。
実際、上座部というと、部派のワンノブゼムという矮小化されたニュアンスが残るし、インド由来の部派仏教の流れが統合された教えという意味でも、「上座仏教」がよいと思われます。
というわけで、「上座部」が差別的という長老のお言葉は、以上のような仏教学界における微妙な議論を踏まえたものです。
長老は、「大乗仏教と上座部仏教という対比はよろしくない、それより大乗仏教と上座仏教が妥当でしょう」とパーリ仏教学の立場から言っているだけなのだが、あまり伝わっていないようだ。
引用元;
http://gotamivihara.bbs.coocan.jp/?m=listthread&t_id=872